大人の女に手を出さないで下さい
「はあ~疲れたあ~」
「ママ~またそんなところに寝てないで!早くお風呂入ってきて!」
家に帰れば愛しの娘、英梨紗をぎゅうっと抱きしめどさっとソファーに寝そべった。
お玉を持ってプンプン怒る高2になる彼女はしっかり者で中学生になった頃から家事全般率先してしてくれる優しい子。
お蔭で梨香子はぐうだらオヤジよろしく家ではゴロゴロしまくっていて英梨紗におっさん!と罵られている。
40過ぎると疲れがたまって直ぐに動けないのだから仕方ないじゃないか。
歳を感じずにはいられないけどこれ以上英梨紗を怒らせると後が怖いからと、梨香子は渋々ソファーから起き上がった。
「お風呂から上がったらちゃんとクリーム塗ってパックしてよ!まだまだ乾燥する時期なんだから油断しないで!」
おませな英梨紗は美容に興味を持ってるようであれこれと調べてはこれがいいあれがいいと試している。
それもあってか母親の梨香子にも美容を勧めていつも綺麗にしてよ!と世話を焼いてくれる。
本当は面倒だけども、娘の好意は有難く受け取っている。
「いつもありがとね、私の天使ちゃん」
ちゅっと英梨紗のこめかみにキスをしてお風呂に入った。
そう言えば、トミちゃんが梨香子に流し目を送っていたオーナー息子をバッチリと見ていて、人生ががらりと変わる出会いはきっと彼の事を言っているのよ~!と騒ぎまくっていたけど梨香子は聞き流した。
確かにオーナーによく似た爽やかイケメンだけども、オーナーのようにときめいたりはしなかった。それに梨香子よりだいぶ年下のはず。
そんな彼が梨香子に興味を持つなどこれっぽっちもないと思う。
きっと彼女がいるだろうしもしかしたらもう結婚して子供も居るかもしれない。
そんな可能性の無い年下男子よりやっぱりダンディーなオーナーの方がいい。
それに、全然違うこれから出会う人が梨香子の人生を変えてくれるかもしれないし。
とにかく、オーナーの息子だけはナイナイ、と梨香子はお風呂に浸かりながら確信するのだった。