大人の女に手を出さないで下さい
そんな梨香子を蒼士は微笑ましく見ているといい匂いが漂ってきた。

「さあ、料理の用意が出来た。こちらヘどうぞ」

知宏の声に従い中に入るとダイニングテーブルにはところ狭しと美味しそうな料理が並んでいる。
デザートまで並んでいておや?と思った。

「いつもなら出来立てを順番にお出しするんですが蒼士のたっての希望で全てご用意させて頂きました」

「え?」

梨香子が驚いていると蒼士は余計なこと言うなよと知宏に文句を言っている。
それを見てると君枝がこっそり耳打ちしてきた。

「蒼士さん何度か相談があると主人に会いに来てたんですが、あなたのことだったんですね。お二人とってもお似合いです」

「え?相談…ですか?」

何を相談してたのだろう?気になるところだけど、

「……あ、あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

まだ蒼士はオーナーと話してる間に聞いておきたいことがあった。

「不躾かもしれないけど、8歳年下の彼との結婚に迷いはなかったんですか?」

「ふふっもちろんすごく悩みましたし何度も求婚を断りました。でも主人に諦めずに口説かれて、もうそんなのこちらが折れるしかないですよね。やっぱり好きだったし。結婚してしまったら今までの悩みなんてどっかに飛んでしまいました」

すごく幸せそうに笑う君枝に梨香子は正直に羨ましいと思った。

「今はとっても幸せです。あなたもそうじゃないんですか?」

「そう…ですかね…」

蒼士を見れば目が合い思わず俯いてしまった。
想われている間は幸せだったと思う。
けど、この後蒼士から何を言われるのか怖いとも思う。

「時間は気にせずどうぞごゆっくりしていって下さい」

蒼士と意味深な視線を交わしてオーナー夫婦は部屋を出ていった。

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