大人の女に手を出さないで下さい
「そう…みんな噂してたのよ。とうとう頑なな私に愛想が尽きて新しい彼女でも作ったんじゃないかって」
「そ、そんな事は決して無いよ!プティビルでそんな噂が立ってるっていうのは聞いてる。でもその誤解は払拭してるはずだから!」
「払拭?…もしかしてみんなに何か言った?今日みんなの態度が変わってちょっと戸惑ってたんだけど」
ああ、いや、その…と言い淀む蒼士をじっと見ていた梨香子にはあっとため息を吐いた蒼士は観念したように話し出した。
なんでも一昨皆を集めて蒼士の梨香子に対する真剣な想いを話したらしい。
そこにはもちろんトミちゃんと英梨紗までもがいてみんなを説得するように話をしたそうだ。
最後は蒼士の本気と英梨紗の母を思う気持ちに感化されてみんな梨香子と蒼士のことを好意的に見てくれるようになったという。
だから態度があんなに変わったんだと梨香子も納得したけどなぜそのようなことをしたのか?
「英梨紗まで…。なんでわざわざそんなことしたの?」
「ある人に言われたんだ。周りの人間の悪意に曝される梨香子さんを守れるのかと。気にするなと言ってもやはり俺達の間にある年齢差は埋められないし少からず好奇な噂は立ってしまう。現に梨香子さんの周りではそういう噂があったことに俺は今まで気付かなかったんだ。今までごめん」
ある人とはもちろん英隆のことで言われて初めて気付く事もあって蒼士はかなり反省した。
ある意味英隆に感謝しているが、この間のマンション前での出来事を思い出して苦い思いになる。
「あ、うん大丈夫。気にしないようにしてたから」
急に頭を下げ謝る蒼士に梨香子は慌てて取り繕う。
振られるんだと思ってたから拍子抜けしたようにぼんやりと蒼士を見つめた。