大人の女に手を出さないで下さい
「愛してる。俺と結婚しよう」

「…え？、でも…」

別れの言葉どころかまさか結婚だなんて嬉しい言葉なのに驚くばかりで素直に受け入れることが出来ない。
梨香子は困惑してどう返事をしていいやら迷った。
決心してきたはずなのに動揺で色々な不安が頭の中をぐるぐると回る。

「子供の事、考えてる？そりゃいたらいいなとは思うけど英梨紗ちゃんがいるし、梨香子さんの命にも関わることだから俺の子供がいなくても構わない」

高齢出産は母体にもかなりの負担があると蒼士は今回のことで初めて知った。そんな危険梨香子にはさせられない。

「そんな、それで蒼士くんはいいの？」

「俺は梨香子さんさえいてくれればいいんだよ。跡継ぎの事も考えなくていい。元々今回の俺の副社長就任もたまたま社内に適任者がいなかっただけで社内に優秀な人材がいればその人が社長をやってもいいんだ。今時家族経営なんて流行らないしね」

簡単そうに言う蒼士に梨香子は素直に受け止めることはまだ出来ない。
蒼士は良くてもやはり周りは許してくれないだろう。特に父の敏明は後継者も孫も望むことは出来なくなる。
それに敏明も梨香子に交際を申し込んでいる。

「でも、オーナーがなんて思うか…」

「親父の事は気にしなくていい。梨香子さんとの結婚は喜んでくれるはずだから」

「え？」
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