大人の女に手を出さないで下さい
父敏明からも交際を申し込まれているのは蒼士は知らないらしい。
敏明には直接会って断ろうと思ってたのでその前に蒼士になんて言っていいものか…。
それに、敏明から聞いた蒼士の言葉が引っかかる。
「…蒼士くんがオーナーに私を幸せにしてくれって言ったって聞いたんだけど…」
「あ!なんでそれを…まさか親父から?」
梨香子がコクンと頷くと蒼士は渋面になった。
ああやっぱり本当なんだと梨香子は肩を落とす。
「いや、あれは気の迷いだ。忘れて」
「は?」
予想外の言葉に溢そうな涙は一気に止まった。
気の迷いってなんだそれ?と呆れた顔になってしまう。
「ちょっと色々と打ちのめされて気が弱ってたんだよ。お陰で親父にも殴られたし…」
「え!ほんとに殴られたの?」
敏明はまるで冗談のように殴ったと言っていたから実はそんなことなかったんじゃないかと梨香子は思ってた。
それも知ってたことに蒼士は驚き親父もお喋りだな…とブツブツ文句を言っている。