大人の女に手を出さないで下さい
「まあ、正直言うと殴られて結構青アザができてさすがにその顔を梨香子さんに見せるわけにもいかなくて暫く会いに行けなかったんだけども…」

「うそっ!青アザ!?」

そんなことになってたとは知らなくて梨香子は思わず蒼士の両頬を抑えてマジマジと顔を見た。
今はすっかり癒えたようで青アザはどこにもないことにホッとする。
急に顔を抑え込まれた蒼士は苦笑い。
頬を抑える梨香子の手に自分の手を重ね合わせた。

「ねえ梨香子さん、俺今、一世一代の告白したのにスルーしてくれちゃってるの気づいてる?」

「え?」

「梨香子さんの不安はどんなに小さなものでも俺が全て解決する。だから梨香子さんの本心を聞かせて欲しい」

そう言って願いを込めるように梨香子の額に自分の額を合わせた。

「もう一度言うよ。俺は梨香子さんと幸せになりたい、だから、結婚して下さい」

ひとつひとつ梨香子の不安を消し去り心を軽くしてくてた蒼士の気持ちが嬉しくて梨香子は瞳を閉じた。
思い出すのは先程の君枝の言葉。
ー 主人は諦めずに私を口説いてくれてもうそんなのこちらが折れるしかないですよね。やっぱり好きだったし ー

全ての不安が取り払われた先に素直な自分の心が見える。
私は蒼士くんの事が好きだ。だから今こんなにも胸が震えて心が暖かさで満たされていく。
もう、折れるしか、ないよね…。

「蒼士くん、私…」

「ちょっと待って」

「え?」

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