大人の女に手を出さないで下さい
「ねえ梨香子さん、このままこの部屋に泊まれるけど泊まってく?」

甘くねだるように聞いてくる蒼士に梨香子は年甲斐もなくときめいてしまった。
この後に起こることを想像してお腹底から甘い疼きが上がってくる。
そのおねだりに頷きそうになってハタと止まった。

でも、待って…。
今日プロポーズされると思ってなかったし泊まるなんて思ってなかった。
さすがに心の準備が、というか色々と物理的な用意がされてない心許ない今の状況に急に夢から冷めたようにじっとりと冷や汗が出る。

「あ、でも…泊まるなんて思ってなかったから何も用意してないし、ほら明日も仕事だし…」

しどろもどろと言い訳をしているというのに蒼士は聞いてるのか聞いてないのかクスクスと笑いながら額に頬にキスを落としてくる。
それから逃れるように後ろに体重をかけるとそのまま押し倒されるようにソファーに仰向けになってしまった。

「こ、心の準備が…」

手をついて上から見降ろしてくる蒼士は今までにないくらい色気を醸し出していて否応なく梨香子の心臓が早鐘を打った。
年下の彼に翻弄されて情けない言い訳をなんとか絞り出す。逃れようとするも妖艶に欲情を孕ませた瞳に囚われ言葉に詰まる。
もう、このまま抱かれても…。

と、一瞬流れに飲まれてしまおうかと思ったけど……。
ああ!でも!現実問題ムダ毛の処理も怠ってたし、下着も機能性重視で可愛いものじゃない。
お腹もたるんでるしお肌もカサカサ!

毎日のように英梨紗にお肌のお手入れちゃんとして!と怒られてたのに面倒くさくてしてこなかったのを今更ながら猛烈に反省した。
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