大人の女に手を出さないで下さい
翌日、幸せの余韻に浸ったまま出勤するとトミちゃんが仁王立ちして待っていた。

「お、おはよう、トミちゃん」

「おはよう。リカちゃん、何か忘れてないかしら？」

いつもの裏声はなりを潜め地の底から這い上がって来るような低い声を発したトミちゃんにさすがに梨香子もビビった。
トミちゃんが男を全面に出した時の声だ。
前に一度聞いたことがあるなと思いながらなんの事だかわからなくて恐る恐る聞いてみた。

「な、なんのこと？」

「知らばっくれないで！蒼士くんからプロポーズされたんでしょ！どうして直ぐに親友のあたしに結果を報告しないのよん！」

急にいつものトミちゃんになって肩透かしを喰らった梨香子がガクッとずっこけそうになる。

「あ…ああ、そのこと」

そういやみんな知ってるんだったわねと気を取り直す。
トミちゃんの後ろを見れば興味津々のスタッフ達がこちらを注目している。
ハルちゃんまでもがハラハラした顔で伺っていた。
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