大人の女に手を出さないで下さい
振り向くとそこにいたのは三雲オーナー！
明らかにこちらに向かって来ていて梨香子は慌てて立ち上がった。

やばい…
蒼士の事で頭がいっぱいで敏明からも告白めいた事を言われていたのをすっかり忘れていた。
断らなければと気まずい思いで目の前に立った敏明を見上げた。

「国永さん、皆さんこんにちは」

「オーナーこんにちは〜いつにも増して素敵ですねえ」

どうもといつものようにさらりと交わした敏明はニコニコと梨香子を見つめている。

「梨香子さん、この間のことですが……」

「あっ！あのっあっちでお話を！」

二人の前でこの間の話をするのは忍びない。
ツクヨミさんはお見通しだろうがトミちゃんに聞かれたら周りに人がいるにも関わらず大騒ぎするに違いない。
恐れ多いながらも敏明をくるっと回転させぐいぐいと背中を押してカフェから出て行った。
人気の無いところにたどり着くと振り向いた敏明に梨香子はがばりと頭を下げた。

「ごめんなさい！追い出すようなことして。…それと、あの…」

「蒼士から聞きましたよ、梨香子さんありがとうございます」

「え？」

蒼士から聞いたとは結婚の事だろう。なのにありがとうとは？梨香子が恐る恐る頭を上げると敏明はにこにこと笑っている。

「あいつがあんな幸せそうな顔をしてるのを僕は初めて見た気がします」

「蒼士くんとの結婚を認めてくれるんですか？でも…」

「勿論です。ああ、この間言った僕の戯言は忘れてください。ただの気の迷いです」

「え？気の迷いって…」

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