大人の女に手を出さないで下さい
昨日も聞いたなと思い出し、親子して気が迷うとかやはり似た者同士なのか?
梨香子がぽかんとしていると敏明は梨香子の両手を握った。

「本当にありがとう。蒼士はああ見えて頼りないところもあるから梨香子さんのようにしっかりとした年上の奥さんが合っていると思っていたんです」

「はあ…」

くい気味に言ってくるから梨香子は思わず身を引いてしまった。

「実は僕の妻も年上だったんですよ」

「え?そうだったんですか?」

「ええ、5歳上でした。妻も結婚を決意してくれるにはかなりの時間を要しました。梨香子さんが悩むのも少しは理解できます。でも、結婚してしまえば歳なんて関係ありません」

敏明も年上好きだったのか、やっぱり似たもの親子なんだなと梨香子は思う。

「亡くなってずいぶん経ってしまって気付けば妻の年齢を越してしまって今では私が年上ですがね」

照れたように頭を掻く敏明はいまだに奥さんが好きなのだろう、梨香子もつられてふっと笑う。
でもひとつ期待してるだろう敏明に言っておかなければならないことがある。

「でも、あの、子どもは…」

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