大人の女に手を出さないで下さい
一度ためらった後にずんずんとこちらに向かって来て真正面から睨まれ梨香子は面食らう。

「あの、国永、梨香子…さんですよね？」

「え？ええ。あなたは？」

「川浦あやかといいます。前に一度お会いしましたよね？」

「………ああ…」

そう言えば、と思い出した。
三雲オーナーと食事をしてたときに偶然会った蒼士が連れてた女のコ。
蒼士は前の職場の後輩で相談に乗ってるだけだと言っていた。
相談に乗ってると聞いただけで昔の嫌な記憶が蘇るから困ったものだ。蒼士もそうだとは思わないけどきっと彼女は蒼士に気がある。
挑戦的な態度にこれは、と思った。

「蒼士さんと婚約したそうですね？なぜ、あなたが？あなた蒼士さんよりだいぶ年上に見えますけど？」

「ええ、まあ…」

「どんな手を使って蒼士さんを誑かしたんですか？もしかして財産目当て？蒼士さんがあなたを選ぶなんてありえない！」

だんだん興奮してきた彼女の声が大きくなって周りの人達が何事かと遠巻きに見てる。
ハルちゃんより容赦無いわねと梨香子は苦笑い。
そんな言い方！とハルちゃんが咎めようとして梨香子はまあまあとそれを制した。

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