大人の女に手を出さないで下さい

「ナニ？リカちゃんトラブル？加勢しようか？」

不穏な空気にトミちゃんも駆けつけ冷静に状況を知ろうとする。
梨香子はそれにも首を振りここじゃ周りに迷惑だから外に行こうと誘ったが断られた。

「いえ、直ぐに帰りますので。お願いがあります。身の程を弁えて自分から蒼士さんとお別れしてください」

「身の程って！あんた蒼士くんの何なのよ！」

「トッ、トミちゃん！」

堪らずトミちゃんが言い返し、今にも喰ってかかりそうなものだから梨香子は抑えるのに必死だ。

「私は蒼士さんの後輩で…いつも相談に乗ってもらってました。なのに急に婚約したからもう相談には乗れないって言われて…。私ずっと…ずっと蒼士さんの事が好きだったんです！なのに告白する前に振られて、しかも相手がこんなおばさんだなんて！納得出来ません！蒼士さんと別れてください！蒼士さんを返して！」

ワッと泣き出した彼女にお客様もそそくさと帰ってしまう。
体のいい営業妨害だとトミちゃんもハルちゃんも呆れ顔だ。
梨香子はつい最近まで自分自身がそう思っていたのだからこの子の言ってることはわからなくもない。

「確かに身の程を考えれば別れた方がいいのかもしれないけど…」