大人の女に手を出さないで下さい
その頃、蒼士は川浦あやかに電話をしていた。
電話で埒があかないようなら会って説得するしかないけどなるべくなら会わずに収めたい。

「梨香子さんの店に行ったそうだね」

『…はい。あの人から聞いたんですか?』

「いや、梨香子さんは何も話してくれなかった。だから今頃になって初めて知って驚いてる」

『そう、ですか』

「店で大騒ぎしたとか。俺のせい、だよね?」

『許せなかったんです。蒼士さんを取られた事が……でも、もういいんです』

「え?」

『蒼士さんに説得されて目が覚めました。蒼士さんの心はあの人のもので私には一縷の望みもないとわかりましたから。蒼士さんはまた私があの店に行って騒ぎを起こさないか心配してるんですよね?もう、そんなことはしませんから安心してください』

「あ…。うん。ならいいんだけど」

「でも…」

「ん?」

「お店には行ってもいいですよね?」

「え?」

「あそこのお店可愛い物がいっぱいあって!普通にお買い物に行きたいんです!もちろんあの人に会ったらこの間のことはちゃんと謝りますから!」

「ああ…いいんじゃない?お客様としてなら梨香子さんも歓迎してくれるだろうし」

よかった!と、安心したようで川浦は『じゃあ、もう迷惑かけるようなことはしませんから』と言って電話を切った。

「はあ…また駄々をこねられたらと思ったけどすんなり終わってよかった」

川浦はもう切り替えて前を向いている。もう心配いらないだろうと安心した。
それにしても、女子はやっぱり雑貨が好きなんだな。
梨香子の店はいつも女子が集っていたが川浦までもが虜になるほど雑貨には魅力があるのだろう。
梨香子が雑貨好きに悪い人はいないと豪語してたが蒼士にも少し理解出来た気がした。
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