大人の女に手を出さないで下さい
「うーん、着いたー」

すっきりとした顔で伸びをする蒼士の横で苦笑いの梨香子は疲れた顔をする。
現地時間午後７時、ヒースロー空港に着き手続きを済ませ外へ出ると冷気が心地良く空には星空が見える。

「変な時間に寝たせいかな、頭がぼーっとする」

「時差ボケもあるんじゃないか？今日本は午前４時くらいだし」

「そうか、時差ボケね、早く慣れないとせっかくの旅行が楽しめないわね」

今日はこのままロンドンのホテルでチェックインの後、今後のスケジュールと交流を兼ねての食事会がある。
楽しみにしてたのだから早く慣れたい。

「俺がサポートするから大丈夫だよすぐ慣れる」

「蒼士くんは大丈夫そうね」

「しっかり寝かせてもらったからね。それに出張や旅行で何度か来てるし。英語はバッチリだから通訳は任せて」

海外が初めてな上に喋れないからちょっと不安だったけどと肩を竦める梨香子は良かったとホッとする。

「そう、私は全然喋れないから心強いわ」

では皆さんバスで移動しまーすと言う添乗員の声が聞こえ蒼士は腕を出しそれに梨香子は手を掛けた。
お互いニコリと笑い皆と一緒にバスへと乗り込んだ。
ホテルに着き、交流会は和やかに楽しく食事ができた。
けど、時差ぼけの洗礼を受けた梨香子は頭がすっきりせず、早々に部屋に戻りシャワーを浴びるとダウンしてしまった。

「ごめんね、蒼士くん先に休ませてもらうね」

ベッドに入り申し訳なさそうにする梨香子の横に座った蒼士は頭を撫で額にキスをした。

「いいよ、ゆっくり休んで。おやすみ」

安心したように目を瞑る梨香子を見つめ先ほど届いたメールをもう一度見た。

[今日こそはしっかり決めるのよ！！！]

トミちゃんからの発破に苦笑いを溢す。
何を決めるのかはもちろん梨香子との熱い夜を過ごすことなのだが、

「今日は無理そうだ、でも４日間もあるからその間に…」

蒼士も期待してこの旅行を楽しみにしていた。
すっかり寝入った寝顔を見つめ梨香子もそうだったらいいなと、ひとりごちる蒼士だった。
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