大人の女に手を出さないで下さい
愛は輝なり
「梨香子さん……梨香子…梨香子…」
何度名前を呼んだだろう。
ここぞとばかりに呼び捨てしてみたりして。
「………ふう…」
「……ん……」
耳に息をかけると小さな反応に笑みが零れる。
暗い室内。
聞こえるのはお互いの息使いだけ。
蒼士は梨香子の頬を撫で耳元に唇を寄せる。
「……おーい、梨香子さーん」
「ん…蒼士く…んん…」
「……梨香子さん起きてくれよ〜」
「……」
無反応に蒼士はガックリと肩を落とした。
サッとシャワーを浴びて急いで戻れば梨香子はベッドの上で待っていた。
と、思っていたら既に梨香子は夢の中。
声をかけても揺すってみても起きる気配は無かった。
「くそう…今日もお預けか…」
まだ濡れてる髪をワシャワシャとかき乱しため息を吐いた。
仕方がない。梨香子は海外旅行に慣れてない上に今日は色々連れ回してしまった、思ってる以上に疲れてるはずだ。
最後のラウンジでの酒がダメ押しだったと元倉達を苦々しく思う。
「よいしょっと」
起こすのを諦め端に寝てる梨香子をずらしその横に滑り込んだ。
こんなに焦らされたのは初めてだ。
普通なら途中で諦め熱も冷めてただろう。
でも、梨香子は…、
梨香子だけは、諦めきれずに追いかけ続けた。
それだけ本気なんだな、と自分のことなのに感心する。
「こんなに恋い焦がれたのは梨香子さんだけだぞ」
「んん…」
ちょっと小憎らしくなって梨香子の鼻をつまむと渋い顔になったので思わずプッと噴き出した。
機嫌を取り戻した蒼士は梨香子に腕枕をしチュっと唇にキスを落として抱きしめると瞳を閉じ眠りについた。