大人の女に手を出さないで下さい
「慣れてるって…」
どれだけ梨香子の周りにいい男がいるんだと、ついつい眉間に皺が寄る蒼士は梨香子の周りにいる自分の知ってる限りの男性を思い浮かべた。
トミちゃん…は容姿は整っているけども男と言うよりは女友達のノリだから違うだろうけど…。
向かいにいるシューズショップの店員に20代の可愛らしい顔立ちの男がいる。よく行くというカフェの店長は40代の色黒でスポーツマンタイプのイケメンだし、梨香子が配送のお兄さんがかっこいいとバイトのハルちゃんと話してるのを聞いたことがある。最近よく来る営業の元倉だったか…彼もイケメンで梨香子と仲良さげだ。
確かに梨香子の周りはイケメン揃いだ。
それに自分の父親。
父を見る梨香子の目がいつもと違うことに薄々気づいている。
梨香子が好きなのはやはり親父なのか?と嫉妬めいた黒い感情がふつふつと燻ってくる。
「あたしのパパ、超カッコいいんだから!背が高くって、目が凛々しくて、弁護士で落ち着いいてて大人の男って感じ」
「え?パパ?」
まさかの発言にまたも驚く蒼士は思わずポロッと言ってしまった。
「でも、パパって…離婚してるんじゃ…」
「離婚はしてるけど!あたしのパパには変わりないし!パパはあたしとママの事今でも愛してくれてるし!ママは…わかんないけど…」
口を尖らせ不貞腐れるように訴える英梨紗にやっぱりデリケートな話をするんじゃなかったと後悔した。
そりゃ実の両親が揃ってる方が子供にしたらいいだろう。
そのパパは今でも二人の事を愛してるのなら復縁の可能性もある。
蒼士は自分がしゃしゃり出てはいけない気がしてぎゅっと胸が潰れる思いがした。
初めての一目惚れが失恋で終わるかもしれないと思うと、胸がシクシクと痛みだす。
あ~俺こんなに本気だったんだな…と血の気が引いて動揺を隠せない。
「ご…ごめんね、変なこと聞いて…」