大人の女に手を出さないで下さい
空港で奥野がこっそり蒼士に聞いてきた。

「今日も仲良さそうだね。昨日の君を見てたら喧嘩でもしたのかと心配したよ」

「いえ、喧嘩したわけでは…」

昨日の情けない姿を見られたせいか奥野に言われて蒼士は羞恥で笑うしかない。
なぜ殆ど知らない奥野にあんなこと話したのか自分でもわからない。
でも、奥野のアドバイスは素直に納得出来た。
もしこれが親父や速水だったら反発心の方が強くて聞く耳持たなかったかもしれない。
一人で悶々としてるより奥野に話せたのは良かったと思う。

「そう、なら良かった」

「あの…」

「ん?」

「色々とアドバイスありがとうございます。ブローチのことも、昨日のことも」

「アドバイスってほどではないけど、君がそう思ってくれるのは光栄だよ」

奥野は笑って蒼士の肩を叩いた。

それから飛行機の搭乗時間まで男同士で話が盛り上がった。
やはり奥野はいい男だ。
男が惚れる男というのか?スマートで落ち着いてて穏やか。こんな男になりたいと憧れる。
そして、梨香子の為に頼れる男になりたい。
蒼士は隣で深田夫人と楽しそうに話してる梨香子を見ながら強く思った。


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