大人の女に手を出さないで下さい
「だから!ママを落したかったら本気見せてよね!生半可な気持ちでちょっかい出してるだけならあたしが許さないんだから!」

「…えっ!」

まさか、反対されると思ったのに逆に発破を掛けられるとは思わなくて蒼士は虚を突かれた。

「ママはあたしの為にいっぱい頑張ってくれたから!もうあたしも大人だしママにも幸せになってもらいたいの!ママを泣かせたらただじゃおかないんだから!」

ちょっと涙目になって睨んでくる英梨紗がどんなに母の事を想っているのか痛いほど良く分かる。
母娘愛っていいもんだなと感銘を受けて蒼士は泣くのを堪えてる英梨紗の頭にそっと手を置いた。

「英梨紗ちゃん、俺本気だから。今は全然相手にもしてくれないけど、いつか必ず梨香子さんの心を手に入れる。絶対幸せにするから」

娘相手に言うことじゃないかもしれないけど、蒼士は真摯に英梨紗に宣言した。
ぽんぽんと頭を撫でると潤んだ瞳と目が合う。

「だから、英梨紗ちゃんが協力してくれると嬉しいな」

「それはダメ!自分の力でママを振り向かせて」

「あ、ダメ?」

あわよくば協力を、と思ったけどきっぱり断られて苦笑い。それでも反対されないで良かったと手を降ろした蒼士はホッとした。
そうか梨香子さんを好きなままでいいんだ。
ほくほくと暖かさが甦る。
そんな蒼士を知ってか知らずか英梨紗は小さな声で呟いた。

「でも…ちょっとなら協力しても…いいよ」

「本当?嬉しいよ、ありがとう」

「う、うん…気が向いたらね…」

満面の笑みでお礼を言うと目が合った英梨紗はポッと頬が赤くなり目を泳がせた。

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