大人の女に手を出さないで下さい
「そうなのよねえ~普通はするでしょ~?でもこの二人、まだシテないのよねえ!」

「トミちゃん!英梨紗の前で何言ってんの!」

梨香子は慌てて英梨紗の耳を塞ぐがバッチリ聞いてしまっていた。

「え?ママと蒼士くんってまだシテないの?あたしとたっくんは付き合って1カ月でしたのに」

「英梨紗!そういうこと高校生が言わないの!」

「え~いまどきの高校生は付き合ってすぐするの普通だよ~」

「それで大騒ぎになったの忘れたの!?」

「へへっ、忘れてませ~ん」

へらへら笑う英梨紗に呆れて梨香子は「英梨紗、ちゃんと聞きなさい」と説教モードに入った。
しまったという顔をした英梨紗は神妙に梨香子のお説教を聞くことにした。

朝から何やってんのよ、と、もとはと言えばトミちゃんの勘違いのせいなのに呆れ顔でミラー越しに二人を見遣る。
蒼士も後ろを振り向き話しかける隙も無くて苦笑い。

「ねえ蒼士くん、ホントにしてないの?婚約もしたのにいい大人がまだシテないとか心配になるんだけど~」

「いや、そこは、滞りなく…」

「え!シタの!?やったじゃな~い!」

思わず答えてしまって蒼士はまずいと思った。
案の定興奮気味のトミちゃんが大声を出し梨香子の怒りオーラが後ろを振り向かなくても分かった。

「そ~し、く〜ん!」

「ま、ママ怖いよう~。愛し合えたんならよかったじゃ~ん!」

蒼士は縮こまり、英梨紗の半泣きの悲鳴が車の中でこだました。

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