恋×チョコレート
そんな考えをぐるぐると頭に巡らせ、菜月が泣き出してしまいそうになった時、ノエルが「ねえ!」と少し緊張したように言う。

「Zie je je nu niet?(今から会えない?)」

それは、菜月が言いたかった言葉だ。菜月の心に嬉しさと申し訳なさが混ざる。

「Ja(うん)」

待ち合わせ場所を決め、菜月は電話を切る。ダメだった、自分から言えなかったとため息を吐き、カップケーキを取りにキッチンへ向かった。



菜月はコートを着て、グラン・プラスへと向かう。

グラン・プラスはベルギーの首都、ブリュッセルの中心にある。バロック様式のギルドハウスとゴシック様式の市庁舎に囲まれた長方形の広場だ。世界遺産にも登録されており、レストランやカフェも多く、地元の人や観光客で賑わっている場所だ。

「ノエル、まだ来てない……」

可愛らしいあの顔を探し、まだ来ていないことを確認して菜月は息を吐く。まだ心の準備ができていない。
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