賽の河原で鬼さんこちら
思わず歌うのを止め、ほう、と大鬼が息を漏らす。

ようやく石を積み上げる気になったのか。

しかし少女はじっと見つめていた石を、次の瞬間には河へと投げていた。

ぼちゃん、と音を立て、石は河の底へと沈んでいく。


「おいお前」


一瞬期待してしまった自分を恥ずかしく思いながら、大鬼が少女に声をかけた。

少女はやはり自分の声には驚きもせず、むしろ笑顔で振り向いた。


「あ、鬼さんおはよう」


ぺこりと頭を下げ挨拶をしてくる少女に、思わず「おはよう」と返してしまう。


「何をしている」


「水切り。知らない?」


悪びれた様子もなく、少女が答える。
< 11 / 53 >

この作品をシェア

pagetop