賽の河原で鬼さんこちら
「それは知っている、そうではなくてだ」


大鬼の声を聞いているのかいないのか、少女は河原の石を一つ一つ手に取り熱心に眺めていた。

やがて手頃な石を見つけたかと思うと、それを手に河の方向へと駆け出し、再び石を投げた。

石は一つも跳ねることなく、ぼちゃんと河に沈んでいった。


「跳ねないなぁ」


再び石を探しに行こうと駆け出す少女の襟首を、大鬼ががっしと掴む。


「塔を積め」


少女の体を自分の顔の前にまで持ってきて、大鬼はすごんでみせる。

大抵の子どもはこの顔を見るだけで言うことを聞くのだが、


「これから積むよ」


少女はにへらと笑いながら答えてみせるだけだった。
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