賽の河原で鬼さんこちら
大鬼は溜息をつくと、近くに落ちていた石を手に少女の隣に立った。


「こうやるんだ」


大鬼が横投げに石を放ると、石はぴしゃんぴしゃんと川面を飛び跳ね渡っていった。

その様を、少女が声を上げて見つめる。


「もう一回もう一回」


きゃっきゃと笑いながら少女にせがまれ、仕方なしに大鬼は再び石を放る。

石は何度も川面を飛び跳ねて回る。

凄い凄いと少女が笑う。


「もういいだろう、私が投げているような石を探せばいいんだ」


大鬼が少女に声をかけると、そこに少女はいなかった。

振り向くと、河原で再び石を探していた。

これで作業を始めてくれるか、という大鬼の淡い期待はもちろん裏切られた。

石を手に四度少女が駆け出し、河へと投げる。


ぼちゃん。


四度目の同じ結果が川面に映る。
< 14 / 53 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop