賽の河原で鬼さんこちら
「ん?」


二十ほどの塔を崩した頃、大鬼は奇妙な子どもを見つけた。

皆が一様に石を積み上げている中、その子どもだけが何もしていない。

年頃は十にも満たないだろう少女だった。

見慣れない顔である。


(新入りか)


 大鬼はゆっくりと少女に近付いていった。


「おいお前」


地獄の底から響いてくるような低い声に、しかし少女はおっとりと反応した。

大きな瞳いっぱいに大鬼を映しながら、それでも少女に驚いた様子はない。


「何故石を積み上げない」


少々拍子抜けしながらも、大鬼が尋ねる。

大抵の子どもは彼の姿を見ると怯えるか泣き出すか、酷いものになると腰が抜けて立てなくなるものもいた中、このような反応は今まで大鬼は見たことがなかった。
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