賽の河原で鬼さんこちら
歌うと、いつでもあの少女がやってきた。

どういう耳をしているのか、どれだけ離れた場所にいても、大鬼の歌声を聞きつけては、その歌を口ずさみながら駆けて来た。

しかし今、どれほど歌おうと、少女の姿は見えてこない。


「最近歌上手くなったね」


ふと、いつかの少女の言葉が大鬼の頭に木霊する。

自分の耳では歌がどう変化したのか、大鬼には分からなかった。

少女が褒めた歌を歌いながら、大鬼は塔を崩して回る。
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