神様のような貴方の箱庭に、死ぬまで二人きりで。
「いらっしゃいませー」
先輩が俺を連れてきたのは、スクランブルエッグやサンドイッチなどがメニューにあるオシャレなカフェだった。
席に案内され、注文をすませる。料理が運ばれたところで、俺は先輩に疑問をぶつけた。
「先輩、最近家はどうなんですか?」
「どうって、相変わらずだよ。父さんは相変わらず厳しい。ただ、強いて言うなら、帰って来なくなったな最近」
「……え?」
「……元々平日は道場いってたから帰ってくんの夜だったんだけどさ、最近は朝まで帰って来ない」
思わず目を見開く。
「女でも見つけたのかもなー」
「先輩の面倒もろくに見ないくせにですか?」
大声で俺は言った。
「……うるさ。朝から元気だなお前は。俺の父さんは元からそんなだよ。俺をゴミクズ程度にしか思ってない」
「……まさか、先輩が朝早くからきてるのは、父親に会わずに学校に行くためですか?」
「随分今更だな。そうに決まってんだろ。花見てんのが一番時間潰れるからな」
「……そうですか」
思わず顔を伏せる。
「もう俺の話はいいから、さっさと食え。授業中お腹空かしても知らねえぞ」
これ以上家族の話はしたくないというかのように先輩は強めの口調で言った。
「……わかりました」
肩を落として俺は頷いた。