このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
表情を変えない律さん。もう、“断らせる”という選択肢はないようだ。
こんなに甘やかされて、いつかバチが当たりそうだなんて考えてしまうが、今日だけは彼の厚意を素直に受け取ることしよう。
「…じゃあ、本当に好きなのを選んじゃいますよ…?」
「あぁ。」
楽しそうに私を見つめる彼。一方、私は商品を選ぶフリをして、そっ、と値札を探す。
高級ブランドで“身の丈に合った”とまでは言わないが、流石に、ぽん、と数十万円のものは頼めない。…そもそもこのお店の“安い”基準は、相当桁外れなんだろうが。
(あれ…?)
その時。なるべく安いものを、と視線を彷徨わせていた私は、ある違和感を感じた。ちらり、と隣のガラスを見やり、目の前のケースと比べる。
そこでやっと、私は違和感の正体に気がついた。近くの時計やブレスレットにはちゃんと値段のプレートが付いているのに、私が選ぶネックレス類のガラスケースにだけはプレートが見当たらない。
頭によぎった心当たりは、一つしかなかった。
「…あの、律さん。もしかして、ネックレスの値段を隠してるんですか…?」
おずおずと尋ねた私。すると、彼は“よく気付いたな”と言わんばかりにさらり、と答える。
「あぁ。来る前に店の人に頼んでおいた。…百合は特に、そういうのを気にするだろうと思ってな。」