このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
「…っ!」
ーーやられた。
完全に、私の思考を読まれている。
普通、ここまで気配りが出来るものなのだろうか?…いや、きっと、“天然タラシ”の榛名律だからこそ出来る技だ。こういうことを、さらっとやるから恐ろしい。
「“本当に”好きなのを選べ。お前は何をつけても似合うだろうからな。」
「くっ…!!」
「なんだ?その声は。」
「…心臓が握り潰された呻きです…」
「?」
正確には、きゅん、とした。
もはや、きゅん、を通り越して“ぎゅん”に近かったが、“スマートな気遣いに心を撃ち抜かれました”なんて言ったら、彼はきっとニヤリと笑みを浮かべて、惚れただろ?、とこちらを見るに決まってる。
悔しい。
彼の口から出るセリフ全てに、心が震えてしまう。何度も、彼に恋に落ちていく。
律さんは、そんな私の心境なんてつゆ知らず、ガラスケースと私を交互に見つめて首を傾げた。
「決まったか?」
「…んー…、気になるのはあるんですが…」
「どれだ?」
「えっと…、この、ピンクゴールドの…」
小さなダイヤとハートのチャームが付いたネックレス。律さんは「いいな。」と呟いてふっ、と微笑むが、私はおずおずと彼に尋ねる。
「…可愛すぎませんか?ハートですし…」
「そうか?百合っぽくて好きだが。」
「すっ…!」