このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
まさか、この男は世界の大財閥ハルナホールディングスを相手取って金を要求するつもりなのか?真人の言葉に、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる仲間の男達。裏家業に根回しをしている真人は、自分のバックに付いている権力にあぐらをかいているようだ。

つくづく救えない男の毒気に当てられ、睨みつける私。

すると次の瞬間、律さんは、ばっ!と真人の手を払った。そして、よろけて顔をしかめた真人に、低く告げる。


「…お前は、金が目当てなのか?」

「…!」 

「いくら欲しい。」

(え…?!)


その場の空気が変わった。

予想外のセリフに、真人だけではなく、私とおばあちゃんも目を見張る。一瞬動揺した真人は、はっ、と信じられないような口ぶりで笑って尋ねた。


「いくら、って…。もしかして、金を渡すつもりか?」

「…。」

「…ははっ!!随分と聞き分けがいいな。さすが天下の榛名だ。話が早くて助かる。」

「額を聞いている。…さっさと答えろ。」


まさか、私たちの身を守るために本当に払うつもりなのだろうか。

彼の真意をはかりかね、動揺する私。

するとその時、真人がニヤリと笑って律さんを見やる。


「ーーまずは、“五百万”。…金持ちにとっちゃあはした金だろ。」

「…!」


嫌味ったらしい奴の言葉に、カチン!とくる。頬を引っ叩いてやろうかと闘志を剥き出しにした私だったが、律さんはそんな私を制止し、静かに答えた。


「ーー悪いが、今、手元にあるのは“百万”だ。今日はこれで手を引いてくれ。」

「!」

(!)

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