このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
すっ、と律さんのスーツの胸ポケットから出てきたのは分厚い封筒。中から覗く“札束”に、言葉を失う。
現金?嘘だろう?
まさか律さんは初めから、万が一に備えて“真人を躱す最終手段”を用意してくれていたのだろうか。表情一つ変えない彼に、思わず涙が出そうになる。
私は、いつもこうだ。迷惑をかけた上に助けられてばかりで、お金に人生を狂わされる。全て、真人の差し金だ。もう二度と、奴のせいで屈辱を味わうような思いはしたくなかったのに。
圧倒的な絶望感に打ちひしがれていると、真人の高らかな笑い声が辺りに響いた。
「はははは…っ!!こんなにアッサリ上手くとは。いいだろう、その金を渡せば危害を加えずに見逃してやる。…本当によこすつもりがあるんだろうな?」
「あぁ。」
ーー“ただ”
そう、言葉を続けた律さん。
真人と同時に私が眉を寄せた次の瞬間。彼はばっ!と封筒から札束を取り出し、勢いよく宙にバラまいた。
「お前がこれを全部拾えたらな…!」
ーーバサバサバサッ!!
高らかに響く律さんの声。空中を舞い踊る数え切れないほどの“一万円”。真人でさえ呆気にとられて立ち尽くしている。
しかし、予想もしていなかった展開に息が止まった瞬間、私の視界に映ったのは、見覚えのある“にっこりマーク”とその隣に並ぶ“可愛いフォント”だった。
“こどもぎんこう”
(!!まさかーー?!)