このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
旦那様は愛を誓う
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「ーー長かった…。まるで“サスペンスドラマ”の俳優にでもなった気分だ。」
真人が誘拐未遂事件を起こしてから一週間後。警察署から出てきた律さんは、疲労を隠せない表情で、ぼそりと呟いた。
事件の参考人として呼ばれていた関係者は、皆、それぞれ都合のつく日に聴取内容の確認のために呼ばれ、真人との関係性やこれまでの経緯などを細かく聞かれた。
そして今日、仕事の都合で伸びてしまった律さんの聴取もやっと終わったようだ。彼を迎えにきていた私が思わず苦笑していると、近くのロータリーで待ち合わせていた“二人”の姿が見える。
「ーーあ!ねえちゃん!」
「ーー律。お疲れ。」
声を揃えてこちらを見たのは、紘太と奏さんだ。たたた、と駆け寄ってきた紘太は、律さんを見て眉を下げる。
「大丈夫ですか?榛名さん…」
「あぁ、心配ない。ありがとな。」
不安げに律さんの顔を覗き込む紘太。コツコツと後に続いた奏さんは、私に向かって声をかけた。
「真人の罪は証明されたんだろう?その後の動きはどう?」
「はい…。現行犯での逮捕だった、ってことと、奏さんの事務所の防犯カメラが証拠になったようです。…有罪は確定だと。」
「奴には“余罪”もあるからな。当時の財閥関係者の証言が必要なこともある。…出来ることがあれば力を貸そう。」
私と紘太の両親を手にかけた過去の事件。今まで逢坂の権力で事故に見せかけられ、闇に葬られていたその全てが明るみになることを祈りながら、私は奏さんの言葉に強く頷いた。