このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
するとその時、私の手に持つ“キャリーケース”を見た紘太が、ぱっ!と目を輝かせる。
「あ…!そういえば、ねえちゃんたち今日から“旅行”だっけ?お土産楽しみにしてる!楽しんできてね!」
ーーそう。
実はこれから、二人で“温泉旅行”にいく予定を立てていた。色んなことが重なり、ゆっくり二人で過ごす時間が取れずにいたことを気にした律さんが急遽立案してくれた“まったり温泉プラン”。
思わず頬が緩みそうになるのを必死に隠していると、腕を組んだ奏さんがにこり、と私に微笑む。
「“夫婦水入らず”って感じ?新婚旅行みたいだね。」
「…っ!!」
不意打ちの爆弾発言にピキッ!と固まる私だが、律さんは動揺もしていない。
「“みたい”、というか、新婚旅行だ。…な?百合?」
「えっ?!」
つい、声が裏返る。くすくすと笑う律さん。やはり、奏さんと彼は紛れもなく兄弟だ。こうやって、すぐ真に受けてしまう私も私だが。
その時、律さんがふと、奏さんに尋ねる。
「そういえば、紘太くんは百合の付き添いで来るのは知っていたが、奏はどうしてここにいるんだ?」
すると、律さんの問いに「あぁ。」と微笑んだ奏さん。次の瞬間、表情一つ変えずにさらり、と告げられたセリフに、一同が目を見開く。
「俺は紘太くんを“口説き”に来たんだ。」
「「「え?!」」」