このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ぽんぽん、と紘太をなだめる奏さんと顔を見合わせて笑っていると、やがて係の人がこちらへ声をかけた。
『まもなく式の時間です。ゲストの方と新郎さんの準備が整いましたので、移動をお願いいたします。』
どきん、と高鳴る胸。
ひらり、と手を振って出て行く奏さんと紘太。
私は、彼らに続いて部屋を出ようとするおばあちゃんを呼び止めた。
「あ、あの、おばあちゃん…!」
「…?なあに?百合ちゃん。」
穏やかな表情で私を見上げるおばあちゃん。
黙って私の言葉の続きを待っている彼女に、私はぎこちなく紡ぐ。
「…あのね、バージンロードのことなんだけど…。一緒に歩いてもらってもいい…?」
「え…っ!」
「打ち合わせでは、紘太と歩く予定だったんだけど、…やっぱり、おばあちゃんに隣にいて貰いたいな、って思って。」
その瞬間、おばあちゃんは大きく目を見開いた。ひどく驚いた様子だったが、彼女はやがて、嬉しそうににっこりといつもの笑みを浮かべて頷く。
「もちろんよ…!百合ちゃんと一緒に入場出来るなんて、私は幸せ者だわ…っ!」
その言葉に、ツン、と鼻の奥が痛む。涙ぐむ私に、おばあちゃんは「あらあら…」と背中を撫でてくれた。
…ここまで来れたのは、家族として私を育ててくれたおばあちゃんのおかげだ。やっと、ちゃんとした“親孝行”ができた。今日の思い出は、きっと一生忘れることのない宝物だ。