このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ぼんやりとそう考えながら、くぁ…、と小さくあくびをして、最近下ろしたばかりの羽毛布団をくいっ、と顎まで引き上げる。
…昔から、冬が近づいてくる気候はあまり好きではなかった。ベッドから出るのが億劫になるし、一日の始まりを気持ちよく迎えられない。過ごしやすい秋のまま、ずっと一年が過ぎてくれたら。子どもの頃は、そんなことも思ったりした。
…と、その時。隣でもぞり、と動く体温を感じる。
(ーー…お。)
すやすやと寝息を立てる彼女。
新婚生活の第一歩としてマンションで同居生活を始めてだいぶ経つが、未だに彼女が隣で寝ていることに慣れない。…これが、長年の片想いの弊害だろうか。
「んん……」
寒さのせいか、猫のように丸くなる百合に、思わずくすり、と笑みがこぼれる。もぞもぞ、と布団の中で何かを探すように手を伸ばす彼女は、まだ夢の中にいるようだ。
(…?何の夢を見ているんだ?)
寝ようと思っていたことなどすっかり忘れ、そっ、と彼女の様子を伺う。一目惚れして買ったという肌触りの良い白のナイトウェアを纏い、穏やかに眠る百合。すー、すー、と気持ち良さそうな呼吸が聞こえるだけだが、彼女の寝顔を見ているだけで何となく満たされた気分になるのだ。時折顔をしかめながら唸る彼女は、見ていて飽きない。
すると、微睡の中、彼女はむにゃむにゃと寝言を口にする。
「……り、つさん……」
「…!」
(俺か…。)