このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
どうやら、探しものは俺らしい。
思わず、はぁ、と額に手を当てる。何とも言えない幸福感といじらしさが込み上がってきたが、爆睡している本人を起こすわけにはいかず、俺は囁くように声をかけた。
「…俺はここだぞ…」
くいっ、と彼女の腕を引いて布団をかけ直す。
そっ、と布団の中で指を絡めて手を繋ぐと、彼女は安心したように手を握り返した。小動物のような力加減に、つい、愛しさが募る。
(…可愛いな。)
縮こまっている華奢な彼女の体を引き寄せ、優しく抱きしめる。じんわりと伝わってくる体温。先ほどまで寒かったのが嘘のようだ。
…と、彼女の温もりで暖をとりながらゆらゆらと眠りにつこうかと思っていたその時。きゅ…、とぎこちなくシャツを掴まれたような感覚がした。
ちらり、と視線を落とすが、彼女の反応はない。しかし、先ほどの無防備な寝息とは違う緊張したような呼吸を首元に感じた。
ある“予感”が頭をよぎり、俺は、すっ、と目を細める。
「…百合、起きてるだろう?」
「…………。」