このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
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「おっ、“お見合い”?!私が…?!」
祖母から連絡が来たのは、つい三日前のこと。
就職を機に一人暮らしを始めてから祖母とはあまり会えない日々が続き、久しぶりの電話にウキウキと出た私。しかし、耳に届いた祖母のセリフは、にわかに信じがたい内容だった。
『そうよ。百合ちゃんも、そろそろ結婚してもおかしくない歳でしょう…?なのに、彼氏を紹介しに来ないどころか、周りに男の人の気配もないみたいだし…。とってもいいお話を頂いたものだから、お返事をしておいたの。』
「そんな勝手に…!!相手の人も知らないのに、お見合いなんて嫌よ!」
『大丈夫よ〜!おばあちゃん写真見たけど、とっても“いけめん”だったから…!歳も二つしか離れていないし、あまり大きな声では言えないけど、お金持ちって聞いたわ〜!百合ちゃん、玉の輿よ…!寿退社も夢じゃないわ…っ!』
ゆったりとした天然ボイスに、うなだれる私。
悪気がないところがタチ悪い。
私は、一文無しとなった一件からお金持ちに信用が無くなっていた。お金なんて、一瞬で飛んでいく。それに、幼い頃、身寄りが無くなった私と弟を引き取ろうとする父方の親戚は誰もいなかった。
確かに、借金を抱えた子ども二人を育てるだなんて相当リスクのある話だとは理解している。しかし、金の切れ目が縁の切れ目とでもいうように、周りの大人たちは手のひら返しで冷たく当たった。
ときどき金の無心に来ていた父方の叔父なんて特に酷く、“貧乏人は逢坂の人間じゃない”とまで言い放たれたのを今でも昨日のことのように思い出す。