このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
「その…。せっかく来ていただいて悪いんですが、いつも昼食はお弁当を持ってきているので…」
「“お弁当”?」
すっ、とカバンから取り出した巾着に、ぱちり、とまばたきをする彼。箸を出してフタを開けると、彼の切れ長の瞳が、ぱぁっと輝く。
「これ、百合が自分で作ったのか?」
「はい。少しでも節約しようと思って。」
「すごいな!百合は“シェフ”の経験があるのか?」
「お、大袈裟ですよ。私だって卵焼きくらいは作れます…!ウィンナーだって、タコさんに切って炒めただけですし…」
どうやら、本当に“素”で言っているらしい。もしかして、この人、“天然”なのか?
じっ、とお弁当を見つめる彼に、思わず頰が緩む。
「榛名さん、私に合わせてくれたからご飯食べてないんですよね。近くで何か買ってきましょうか?」
「んー…。いや、気にしなくていい。百合と過ごせる時間が減るから。」
「っ!またそうやってからかう…」
「からかってない。」
表情一つ変えずに、私を見つめる彼。
そのまっすぐな眼差しが落ち着かない。そもそも、こんなカッコいい人と向かい合ってご飯を食べていること自体、そわそわする。
(私だけ食べるのもなぁ…。食べかけのお弁当を分けるってのも申し訳ないし…)
その時、ふと、デスクの中に閉まってある“非常食”が頭をよぎった。
「榛名さん、“カップラーメン”食べます?」
「ん?」
「私、残業する時用に、いくつかストックしてるんです。美味しいですよ。シーフード味で、お気に入りなんですけど……」