このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
きょとん、と目を見開く榛名さん。
彼の顔を見た瞬間、私は、はっ!と言葉が詰まった。
(しまった。榛名さんみたいに、いつも高級なビュッフェとか食べてそうな上流階級の人に庶民的なカップラーメン勧めるなんて、失礼だったかも…!しかも私の“ストック”…!)
ぱちぱちと私を見つめる彼に、私は慌てて訂正する。
「す、すみません!私のことはもう大丈夫なので、外で好きなもの食べてきてください…!」
気分を悪くしていたらどうしよう、と、思わず血の気が引いた私。
しかし、彼から返ってきた答えは、私の予想外のセリフだった。
「待った。“それ”、食べたい。」
「えっ?」
私が、はっ!として顔を上げると、彼の表情は何一つ変わらない。
「“それ”って、カップラーメンですか?」
「あぁ。」
「えっ、いいんですか?セールで買ったようなやつですけど…」
「?何か問題でもあるのか?」
「いや、榛名さんのお口に合わないかな…って。」
「百合が気に入っている味なんだろう?せっかくオススメしてくれたなら、それが食べたい。」
ふいに、胸が音を立てる。
なんだ、その言い方。不意打ちにも程がある。
全身ブランド物で固めて、高級レストランのシェフが作った料理しか口にしないような生活を送れるほどの御曹司なのに、私が“好きなカップラーメンがある”と言っただけでそれを食べたいと言う。
(変な人だ…)
私は、戸惑いを隠すように席を立ち、デスクから見慣れたカップラーメンを持ってきた。
おずおずと差し出すと、彼は、じっ、とそれを見つめている。
「あ…、どうぞ。お湯、隣のテーブルにあるので。」
「?」
「…?開けていいですよ。」
「あぁ…」