このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


なんだかぎこちない。

なぜか、“警戒”しているような緊張感を感じる。

なんとなく感じる違和感を不思議に思いながら榛名さんを見つめていると、ペリ、とフタを開けた彼が、ぐっ、と顔をしかめた。


「…百合。これ、不良品だぞ。」

「えっ?!買ったばかりですよ?そんなはずは…」

「見ろ。“麺がカチカチ”だ。」

「え?」

「?」


顔を見合わせる二人。

食い違う会話。

違和感の正体に気づいたのは、それから数秒後のことだった。


「まさか、榛名さん、カップラーメン食べたことないんですか?」

「!」


ぴく、と彼の肩が反応する。

気まずそうに無言で視線をそらす彼に、私は思わず吹き出した。


「あははっ!そんなことあります?“不良品”だなんて言う人、初めて会いました…!」

「仕方ないだろう。さすがに売ってるのは見たことあったぞ。食べて育って来なかっただけで。」


この“上流階級”発言も、食べ方を知らないと言い出せなかったと思うと、なんとなく可愛く思えてしまう。

どうやらこの人は、一般常識やモラルは持ち合わせていても、どこか“ズレて”いるらしい。先程から垣間見える“天然スキル”の理由も、庶民とはかけ離れた生活を送ってきたからなのだろうか。

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