このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


「お湯を入れて、三分経ったら食べられますよ。」


カップラーメンの食べ方なんて、初めて教えた。

ちなみに、腕時計でしっかり三分測る人も初めて見た。


「百合。三分経ったぞ?」

「はい。どうぞ。」

「スープ入れるぞ?」

「ふふ、確認しなくて大丈夫ですよ。」


面白い。

なんだか、“初めて料理をする子ども”を見ている気分だ。

麺をもぐもぐする彼は、時折「…美味い。」と感想を言っている。心なしか満足げなのが伝わってきた。


(…この人、きっと、心からいい人なんだよな。)


一般人とは感覚がズレてるし、私とはまるで違う世界に生きてるし、ほぼ初対面の私に“嫁になれ”だなんて言ってくる俺様御曹司だけど、“嫌いにはなれない”。

そう思い始めてる私も、相当おかしい。

知らないうちに、この人のペースに巻き込まれている。

やがて、お弁当を食べ始めた私は、黙々とカップラーメンをすする彼にふと、尋ねた。


「榛名さん、普段料理とかしないんですか?」

「したことないな。家でもあまり作らない。」

「へぇ…。じゃあ、いつもお昼は外で食べるんですか?」

「んー…、いや。“いつもは食べない”から。」

(え?)

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