このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ぐい!と彼の腕を引く私。
何だかんだ言いながら、「おっと」と立ち上がる彼もされるがままだ。
「じゃあ、明日も仕事だし、私もそろそろ帰るね!」
「はは、おばあ様。おたくの百合さんは実家で二人きりになるのが恥ずかしいようで…」
「誰もそんなことは言ってませんが…?!」
さらりと言い放った彼のセリフに思わず突っかかる。おばあちゃんも紘太も、微笑ましいような視線を向けてくるのがじれったい。
腕を組んだまま、半ば強引に玄関へと向かう私。
あぁ、いたたまれない。さっさとこの場から離れないと。やはり実家に連れてくるなんて間違っていた。こんなの、彼を“特別な人だ”と言っているようなものじゃないか。
ーーと、その時。
私の危惧していた爆弾が、おばあちゃんの口から放たれる。
「気をつけて帰るのよ〜!次に会うのは“結納”かしら〜?」
「ッ!!!」
やられた。
おばあちゃんからしてみれば、お見合いはまだ続いている。しかも、いい方向に進展してるとさえ思われている。
紅茶を吹き出しかけた紘太をよそに、おばあちゃんは満面の笑みだ。
はやく否定しなくては。
しかし、私の言葉を遮ったのは、他でもない榛名さんの声だった。
「ははっ、そうですね。百合さんが俺のことを好きになってくれれば今週末にでも。」
「?!!?!」
「あら、そうなの?なら、敬老会は休まなきゃね。」
ーーおばあちゃん。
頼むからゲートボール大会に行ってくれ。
そんな私の心の叫びは、閉まりゆく玄関の向こうには届かなかったのであった。