このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
「ーー…さん、逢坂さん!」
「!」
はっ!と現実に引き戻される。
隣から声をかけているのは、先ほどの上司だ。
「大丈夫?逢坂さん。聞いてる?」
「っは、はい!すみません。…えっと、何でしょう?」
ごくり、と、たまごサンドを飲み込んだ私が、ガタン!と席を立つと、目の前に、ポップな音楽教室の広告が差し出された。
ピアノやバイオリンのイラストが印刷されたかわいらしいデザインのポスターは、あらゆる商業施設で見かけたことがある。
「あの、これは…?」
「今度、ウチの会社でここの広告制作を依頼されたんだけど、逢坂さんに担当してもらおうと思って。」
「えっ?!私ですか?」
「うん。…実はハルナホールディングスの社長が、直々に逢坂さんを指名したらしくて。」
どくん!
聞き覚えのある名前に、震えが走る。
ハルナホールディングスの社長は榛名家の長男だと聞く。つまり、私とお見合いをした榛名さんのお兄さんだ。
ホールディングスの社長が、音楽教室事業の広告制作を依頼?
(直々に私を指名…?一体、どういうこと?)