このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ーーコンコン。
「!」
部屋に響くノックの音に、びくっ!とした。
(きた…っ!)
ギィ、と開く扉に、すっ、と立ち上がる私。
ーーと。
好奇心と緊張感が、マックスに達したその時。
扉の向こうから現れた“彼”の声を聞いた瞬間、私は呼吸さえ忘れたのだ。
「ーーふふ。また会ったね。“昨日ぶり”、かな?」
「…!!…そ、“ソウ”さん…?!」
すらり、としたシルエットと、眉目秀麗な顔立ち。ブランド物のスーツを着こなした彼の顔には見覚えがある。それは、昨夜クルーズ船のバーで一緒に時間を過ごした“ソウ”であった。
くすり、と品のある笑みを浮かべた彼は、すっ、と名刺を差し出す。
「改めて。代表取締役社長の榛名“奏”です。今日はわざわざありがとう。…はい、名刺。」
「…!お、逢坂百合です。本日は…」
「いいよ、かしこまらなくて。君のことはよく知ってるし。」
初対面であるはずの社長が、まさか彼であるとは思わなかった。…と、状況を理解すると同時に、私は、はっ!と自分の醜態が頭をよぎる。
「あの、昨夜はご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした…!榛名さんのお兄さんだとは思わなくて、とんだ失礼を…」
「気にしなくていい。無事に帰れたようでよかった。…ほら、座って?」