こんな気持ちがあることを私は知らなかった。
「ありがとう。急に誘ったのに来てくれて。」

「こちらこそ、予定も特になかったからちょっとびっくりしたけど、誘ってくれて嬉しかった。でも、どうして私を?ほとんど喋ったことなかったよね?」

「俺さ、小説読むの結構好きなんだけどね。好きな作家さんが中川さんと一緒なんじゃないかって高校の時からちょっと気になってたんだよね。」

「え、そうだったの?!もしかして神谷海先生のこと?」

「そうそう!中川さん教室でよく神谷海先生の本読んでたから、本当は話しかけたかったんだよ。」

「そうだったんだー。だったら話しかけてくれたら良かったのに。」

「今まで話したことないのにいきなり話しかけたら変だと思われるかなーとか色々葛藤があったんだよ、俺の中にも。それに本読んでる時の中川さんって本当に楽しそうで、まるで本の中に入り込んでるみたいでさ。そんな姿見てるのが俺の癒しだったんだ。」


やっぱり分かんない。
神谷海先生を好きだってことは共有できて嬉しかったけど、俺の癒しって何?
小宮山くんなんか企んでるの?
今までろくに恋愛なんてしてこなかったから小宮山くんの意図が全然分からなくてモヤモヤした。


ただ私と話してる時に見せる笑顔は今まで見たことのない笑顔で。そんな小宮山くんのことが少し気になり始めている私がいた。
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