こんな気持ちがあることを私は知らなかった。
帰省している間、何度も小宮山くんとご飯を食べに行って色んなことを話した。
小宮山くんがいきなり私を麻子って呼び始めるから私も秋って呼ぶようになった。
趣味が同じこともあって話してると本当に楽しくて。私は秋にどんどん惹かれていった。


「俺、明日向こうに戻るんだ。」

「私も明後日だよ。こっち帰ってくるってなった時はみんな社会人だし予定合わないって分かってたから、つまんないと思ってたけど秋がいてくれて良かった。ご飯誘ってくれてありがとう。」

「麻子、お願いがあるんだけど。」

「何?」

「俺、麻子のことずっと好きだったんだ。だからあの日駅で見かけた時、本当にラッキーだって思った。こんなチャンス二度とないと思って声かけたんだよ。俺のこと少しでもいいって思ってくれてるなら、今すぐ付き合うとじゃなくていいから。
俺が麻子と付き合いたいって思ってるってことを視野に入れて俺と向き合ってほしい。そういう意味で、俺と友達になってくれませんか?」


信じられなかった。秋に惹かれていく気持ちを押し殺すのに一生懸命だった私には余計に。
秋がこんなに必死で私への想いを伝えてくれてる。
私があまり恋愛経験がないのを分かってて、私のペースに合わせようとしてくれている。


「秋、私もあなたのこと、好きになり始めてる。」


私たちはこうして始まった。
大学在学中は遠距離で、秋はモテるから不安になったりそんな私のせいで少し喧嘩したりもしたけど私たちは順調に進んでいった。
そしてお互いに地元の会社に就職して、周りの後押しもあってそのまま結婚した。
私には秋以外いない。そう思っていた。本当に幸せで大好きで。
月並みだけどおじいちゃんおばあちゃんになっても手を繋いで仲良く散歩したい。ってそう思ってた。


でも、あの日。
私の中で何かが動いた。
あの日、あなたがこの会社に来て私の中の色んなものが変わってしまった。


神田侑真、彼を一目見たその瞬間。
私の心は大きく揺さぶられてしまったの。
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