Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

「……あれ、それ茅野さんのノートですよね? どうして矢井戸君が?」

「……え、いや」

 ギクッとなって、つつーっと柚葉に目をやると──。

 柚葉は頬を紅潮させたまま目を見開き、ノートと先生の顔を交互に見て、あわあわと言葉を探しているようだった。

 緊張してるのか舞い上がってるのか、さっきまで俺にまくし立てていた剣幕などどこへやらだ。

 ──こいつの心の中を察するに……。

『野波先生が表紙だけ見てあたしのノートだって気付いてくれるなんて……!』

 ってとこか。

 ……この猫かぶりめ。誰だお前。


「あー、さっき借りたんですよ。写さしてもらおうかなーと思って」

 俺は正直に野波センセーに告げた。

 提出ギリギリにそんな事をするなんて、自分のノートが真っ白なのを白状するようなもんだけど。

 ──…あれ?

 そういえば俺ら、ついさっきまでノートを巡る攻防戦繰り広げてなかったっけ。

 ……まぁいいや。

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