Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

「あー……でも、こいつ──」

 負け惜しみの感情……というか、キラキラタイム中の柚葉をいじりたくなった俺は、受け取ったノートで柚葉を指し──。

「古文以外の授業、マジで悲惨ですよ。世界史とか、白目剥いてよだれまで垂らして授業受けてますから」

 と、ちょっと貶《おとし》めるような意地悪をしてやった。

 うわ、俺完全に悪モンじゃん? と思いつつ、実際、世界史の授業で半目かつ白目で寝てるこいつを見たことがあるから嘘ではない。──よだれはまぁ、誇張だけど。

 片や、「へぇ、茅野さんが? 意外ですね」と微笑を漏らす先生。

 そして片や──。


「……………………」


 ハッと息を吸い込み、赤面を通り越した蒼白を露にしては凝固する柚葉。

 そして次の瞬間──。


「──……ッ!?」


 俺はギョッと目を見開いた。

 凝固の解けた柚葉が、軸足の踵をキュッと横にし、瞬時に構えの姿勢を取っているのに気付いたのだ。


(──殺気……!)


 空手少年時代に培った防衛本能が働きかける。


 これは──

 これは、柚葉の十八番である横蹴りの型──!



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