Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
第2話 格闘天使ちゃんの恋

「……ねー。ごめんってー。ゆずたんごめんってー」

 ──放課後。

 部活終わりに、俺は委員会上がりの柚葉を待ち伏せしていた。──こいつは何気に文化祭実行委員なのだ。

 昇降口を出てスタスタと帰ろうとする柚葉を、謝りながらてけてけと追いかける。


 ボコられた挙げ句、柚葉から「あたしの半径5メートルは近づかないで!」という厳しすぎるお達しを受けたにも関わらず、懲りない俺はひょこひょこと柚葉の後をつけているのだ。

 ……つか半径5メートルとか範囲でかくね? 無理じゃね?

 クラスメイトなのに同じ教室にいたら弾き飛ばされる距離だよね。

 とか思いつつ、実質半径1メートルぐらいの付かず離れずの距離をうまくキープしながら付け回してはいるんだけど。


「……近づくなって言ってるでしょ。それとそのゆずたんってのやめて」

 不機嫌すぎるトーンの声を発しながら、振り向きもせずスタスタと歩いていく柚葉。

「じゃあ、ゆずぽん」

「………」


 ──ジーザス、無視だよ。ポン酢と突っ込むテンションですらないらしい。

(これはもう、ガチギレの域ですな……)

 俺は他人事のように顎に手を添え、フムフムと考える。

 さっき食らった連突き(上段正拳突き二本)……。痛ぇよ、顎と顔面。さすがは格闘天使ちゃんだわ。

 これはもう、ひたすら謝って許しを乞うなり励ましの言葉を掛けてフォローするなりするしかないな。


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