Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
それから柚葉は、空手を習い始めた。
柚葉自身も、泣いてばかりの自分を払拭したくて、だからこそ──負けたくないからこそ、大の男相手にも毅然と立ち向かえる子になったのだろう。
そんな過去を背負いながらも闘える柚葉を、俺は誰よりもかっこいいと思った。
同時に、適わないと思った。
だから俺は、柚葉相手の組み手でも連敗する。
白、緑、紫、茶──はじめはスムーズに変化していった帯の色も、級位が上がるにつれ厳しくなってきた。
元々筋のいい柚葉のようにはいかない。
そんな俺だから、バレンタインのチョコをそれとなく柚葉にせがんでも「バッカじゃないの?」と一蹴される。
話すとつんけんしてるけど、たまに見せる笑顔や照れた表情、そして美味しい物を食べてはにかむ所に無性にときめく。
男を寄せ付けない、孤高の格闘天使ちゃん。
そんな柚葉を、俺はずっと──……。