Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
学校を出た俺は、そのまま柚葉を連れてすぐさまバスに乗り(バスの中ではめっちゃ気まずかった)、とある停留所で降りて少し歩いた場所にあるこの公園へとやって来た。
ある目的を果たすためには、この公園の草むらの陰が絶好の場所なのだ。
『いつまで』と聞かれ、俺はスマホの時計に目をやる。
「え~っと……。もうちょい……」
曖昧に答えながら、歩道に目を向ける。
歩道には、買い物帰りの主婦やお年寄り、習い事の帰りらしい小学生の自転車の一団が賑やかに通過したりした。
「もうちょいって何なの、そのアバウトな感じ。さっきの勢いはどうしたのよ。お灸を据えるんじゃなかったの?」
「いやいや、ホントもうすぐ……。多分……」
「……は? 多分?」
威勢よく連れてきたはいいけど、アテが外れたらどう収拾つけようかという不安も過る。
たじたじと独り言ちると、隣からは一層鋭い眼光。
「……不発…だったらどうしよう……」
「不発ってどういうことよ? ここまでついて来てやったのに無意味ってこと?」
「いや……きっと大丈夫だとは思うんだけどさ……。ほら、もし不発でも、俺とゆずたんで公園デートを楽しめたってことで」
「はあ? こんな草むらでコソコソして何がデートよ! てゆーか何であたしがあんたとそんな事しなきゃなんないのよ! それとゆずたんってのヤメテ。目的があるんならさっさと言って」
「あいだだだっ! ちょ、やだ、耳引っ張んないで──」
──と、柚葉から逃げるように歩道に目を向けた瞬間──
「あ……。来た……」
目的物のご到着に、俺は胸を撫で下ろし声を潜めた。